アルツハイ

アルツハイマー患者の脳の中を見てみよう

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認知症で最も多いアルツハイマー型認知症では、神経細胞の集まりである大脳皮質に変性が起こり、神経細胞が死滅、減少して、脳が萎縮していきます。脳の萎縮は広範囲にわたり、なかでもとくに側頭葉や頭頂葉が目立ち、通常(成人)1200〜1400gある脳の重さは、進行した患者さんでは1000g以下になります。

 そして、脳が萎縮すると、その箇所の脳血流が低下し、さらに神経細胞間で情報を伝えていた神経伝達物質も失われてしまい、障害された部位が担っていた認知機能が低下していきます。

 この現象は、レビー小体型認知症や前頭側頭型認知症、また血管性認知症でも同じで、血管性認知症の場合は、脳出血や脳梗塞で脳神経細胞が破壊され、損傷が残ると、その部位の認知機能が低下し、認知症を発症します。

 では、アルツハイマー型認知症の患者さんの脳の中をもう少し探ってみることにしましょう。

 実は、アルツハイマー型認知症の脳内では、「老人斑」と「神経原線維変化」という二つの特徴的な構造変化が起こっています。これが脳神経細胞の死滅、減少の原因です。

 老人斑というのは、アミロイドβという神経細胞毒性の強いタンパクが、神経細胞外に沈着したもので、健康な人の場合は老廃物として脳から排出されるのですが、アルツハイマー型認知症の患者さんの場合は、スムーズに排出されません。ですから、ある程度進行した患者さんでは、大脳皮質の広い範囲に、この老人斑が出現しています。

 さらに、アミロイドβが蓄積して、ある程度の年月が経つと、今度は神経細胞の中に糸くずのようなものが蓄積します。これが神経原線維変化で、タウと呼ばれるタンパク質が凝集することで起こります。タウは、神経細胞で発現している微小管随伴タンパク質で、普段は細胞骨格において大切な役割を果たしていますが、そのタウが正常な機能を失い、脳神経細胞の中に異常な線維をつくってしまうのです。

 このように、アルツハイマー型認知症の患者さんの脳では、老廃物として脳から出ていくはずのアミロイドβがスムーズに排出されず蓄積し、その後、タウが集まり、やがてこのタウに変化(神経原線維変化=タウのもつれ)が起こり、脳神経細胞の死滅を招くことになるのです。

 

少し前になりますが、『NHKスペシャル アルツハイマー病をくい止めろ!』(2014年1月19日放送)という番組で、アルツハイマー病は、実は、発症の25年も前から脳に変化が現れている、という衝撃的な事実が紹介されました。

 これはワシントン大学を中心に、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ドイツの研究機関が協力して進めているDIAN(ダイアン)研究によるもので、研究名のDIANは、(遺伝性アルツハイマー病ネットワーク)の頭文字をとったものです。

 研究は、家族性アルツハイマー病の原因遺伝子をもった人(キャリア)と、原因遺伝子をもたない人(ノンキャリア)の脳を観察し、アルツハイマー病発症までの脳の変化を明らかにするというもの。

 その結果、アルツハイマー病の最初の変化とされるアミロイドβは、キャリアの人の脳では発症25年前頃から溜まり始め、発症後は減少に転じていることがわかったのです。

 また、キャリアの人のタウは、発症15年ほど前から増え始めていました。このことは、脳神経細胞が死に始めているということにほかなりません。さらに、この頃から、徐々に海馬の縮小が始まり、発症10年前になると、徐々に記憶力などの衰えが見られるようになったということです。しかし、もの忘れがひどくなって、日常生活に支障が出始めるのは、アルツハイマー病発症後のことだといいます。

 一方、ノンキャリアの50歳代の人たちの脳でも、アミロイドβの蓄積は見つかっています。私どもの宇都宮セントラルクリニック、野口記念インターナショナル画像診断クリニックの外来においても、そういうケースは珍しくありません。つまり、一般的なアルツハイマー病(孤発性アルツハイマー病)でも、10〜20年もの長い時間をかけて進行していくことが考えられるのです。

 ですから、早期発見・早期治療が最重要なのです。

 酷なことをあえていいますが、アルツハイマー病の症状が現れた段階では、すでに脳は激しく損傷しており、「手遅れ」なのです。

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