原因

認知症を食い止めろ!~脳内で何が起こっているのか~

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認知症は、脳の神経細胞が変性または損傷することによって、認知機能が低下する病気です。では、その人の脳の中では、いったいどのようなことが起こっているのでしょうか。

 それを説明する前に、まずは脳の構造をちょっとのぞいてみましょう。

 脳は、大脳、小脳、脳幹の三つに分けられますが、人間では大脳がとくに大きく発達し、脳全体の約8割を占めていて、司令塔のような働きをしています。そして、この大脳の表面は、大脳皮質という脳神経細胞が集まった薄い層に覆(おお)われていて、新しい皮質(大脳新皮質)と古い皮質で構成されています。

 古い皮質は、食欲や性欲などの本能的な欲求や、恐怖や怒りなど情動の中枢があるとされています。一方、新皮質は、動物が高等になるにしたがって出現してきた部分で、約140億個の神経細胞が集まり、記憶や知能、精神作用などを営(いとな)みます。人間では9割以上が新皮質で、これこそが人間らしさの源(みなもと)ということができます。

 また、大脳新皮質は、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉の四つの領域に分けられ、前頭連合野、頭頂連合野、側頭連合野の三つの連合野を構成して、高次脳を司(つかさど)っています。

・ 前頭葉は、思考、判断、感情、意欲、運動機能

・ 頭頂葉は、空間認識、皮膚感覚

・ 側頭葉は、聴覚情報

・ 後頭葉は、視覚情報

 を司り、また、

・ 前頭連合野では、知識、判断、行動、人格

・ 側頭連合野では、視覚刺激に基づく記憶

・ 頭頂連合野では、自分がどのような空間的位置にあるのか

 をそれぞれ認識する機能をもっています。そして、それぞれの機能が統合され、人間独特の認知行動が生み出されるのです。つまり、連合野は異なる系統の情報を統合し、高度にプログラムされた指令を出しているというわけです。

 

 

 

脳はどのようにしてものごとを認識しているのか

 

 脳神経細胞は、20歳代にピークを迎え、その後は加齢に伴って死滅の一途をたどり、60歳を過ぎるとそのスピードは急速に上がることが知られています。しかし、その一方で、大人になってからも、外界の刺激によってシナプス数が変化することが報告されています。つまり、脳神経細胞内ではシナプスが産生され、60歳を超えても努力次第で増やすことが可能だということです。

 シナプスとは、簡単にいうと「神経細胞と神経細胞のつなぎ目」のことで、このシナプスの活動が脳の機能を反映しているといえます。

 例えば、ここに黄色いバナナがあるとします。私たちはそれを見たときに、網膜の感覚細胞が光や色を感受し、その信号が神経を伝わって、脳の奥のほうに入っていって、黄色いバナナと認識します。信号はそれまでにいくつもの神経細胞を乗り換えていくわけです。その信号の乗り換え場所がシナプスです。

 要するに、ある情報が神経細胞に入力されると、情報は電気信号に変換されて、神経細胞の細胞体から軸索(細胞体から延びる突起部分)へと伝えられますが、この軸索の先端の接続部分がシナプスです。

 しかし、シナプスには隙間(シナプス間隙)があるため、軸索の端(シナプス前終末)に到達した情報を次の神経細胞へ伝えるためには、伝令役が必要です。その伝令役となるのが神経伝達物質で、これはシナプス前終末から放出されます。この神経伝達物質が、次の神経細胞の細胞膜にある受容体に結合すると、新たな電気信号が生じて情報が伝達されるというわけです。

 つまり、脳内では常に、「神経伝達物質と受容体との結合」→「シナプス内に電気信号を送る」ということが行われていて、このおびただしい「結合と送信」が私たちの日常の活動を支えているのです。

 このように、シナプスの役割は、神経細胞間の情報を橋渡しすることです。したがってシナプスの数が減少し、働きが悪くなると、脳は正常に機能しません。すなわち、シナプスの働き(数)が、学習、記憶、運動機能に直接反映されると推察されます。

 ですから、認知機能を改善させるためには、基本的にシナプス伝達を促進させることが必要ということになります。

 ちなみに、神経伝達物質は100種類以上存在するといわれており、そのうち約60種類が発見されています。促進に働くもの(興奮性伝達物質)と、抑制に働くもの(抑制性伝達物質)があり、これらのバランスが崩れることで、精神的な疾患をきたすことが指摘されています。

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