ホモシステ

アルツハイマー病とホモシステイン酸のお話(その1)

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Human brain research and memory loss as symbol of alzheimer’s concept with missing pieces of the puzzle

アルツハイマー病の救世主となるホモシステイン酸とは

少し難しい話になりますが、アルツハイマー病と神経細胞の関係を分かりやすく理解するために、ラットを使ったある実験を試みました。ここで重要な仮説は、「神経細胞のコネクションを抑制するもの、あるいは破壊するものこそアルツハイマー病の原因物質ではないか」、ということです。

先ず、ラットの足に電気ショックを与えると、体がこわばって動かなくなってしまいます。これを「恐怖のすくみ」といいますが、このすくみは脳の運動野の機能を抑制してしまう現象です。すくみを誘導する部位は、大脳辺縁系の中のひとつ、前帯状皮質と呼ばれるところで、ここが活性化されるとすくみの症状が出るのです。前帯状皮質を活性化するものはどんなものなのか。ホモシステイン酸と呼ばれる物質を注入してみると、ラットのすくみの時間が長くなるという現象が起きたのです。このことから、ホモシステイン酸は辺縁系に作用する伝達物質のひとつであり、辺縁系を活性化する作用があることがわかりました。

 

 

さて、大脳皮質と大脳辺縁系の関係を見てみると、お互いを抑制する働きがあることがわかっています。大脳皮質の機能が活性化すると、辺縁系の機能は抑制され、反対に辺縁系の活性が強くなると、皮質の機能は低下します。

 

だいぶ前の話になりますが、中学生の男子生徒が、英語の女性教師から授業中の態度が悪いと叱られ、教師をナイフで刺した、という事件がありました。男子生徒は、そのときのことを「自分は頭の中が真っ白で、何も覚えていない。気がついたら刺していた」と話したそうですが、これは辺縁系の活性化によって、大脳皮質の機能が抑制されてしまった典型的な例といえます。

 

緑茶をよく摂る人ほど脳の働きが活発になる

私が、ホモシステイン酸に目をつけたのは、「ホモシステイン酸が神経毒を示す」という2000年の論文発表がきっかけホモシステインというアミノ酸がアルツハイマー病の危険因子だということが書かれていたので、それを調査しました。すると、お茶を飲むとホモシステインの濃度が低くなることがわかったのです。それで学会で発表したのですが、ホモシステインは神経を殺さないのになぜアルツハイマー病に関係があるのか、と一笑に付されました。ですから、前出のホモシステイン酸神経毒のその論文は、私にとってまさに「目からウロコ」だったのです。

そして、ラットの培養細胞に、ホモシステインでした。かつて私は日本茶(緑茶)と認知機能の関係を調べたことがあり、お茶の摂取量が多いほど認知機能が良いという結果を得ていました。不思議に思い文献を調べたところ、とホモシステイン酸を投与した実験で、ホモシステインは神経細胞を殺さないが、ホモシステイン酸は神経細胞を殺すという結果を得ることができたのです。さらに、アミロイドβがある場合とない場合で、ホモシステイン酸がどのくらい毒性を示すかという実験をしました。すなわち培養細胞でアミロイドβがある状態のコントロール(対照群)、アミロイドβがある状態でホモシステイン酸を投与したもの、アミロイドβの阻害剤を投与したものを比べました。

するとコントロールでは何の影響もありませんでしたが、ホモシステイン酸投与群では、24時間で神経細胞の生存率は75 %、48時間が経過すると50%くらいまでに低下しました。しかし、阻害剤を入れると毒性がなくなりました。

これによって、ホモシステイン酸の毒性は、アミロイドβの有無に関係していて、アミロイドβがあると毒性が強まることがわかったのです。

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