症状

「認知症」とは脳細胞が壊れていき、認知機能が低下する病気です

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 WHO(世界保健機関)は、認知症とは「いったん発達した知能が、さまざまな原因で持続的に低下した状態。通常、慢性あるいは進行性の脳の疾患によって生じ、記憶、思考、見当識、概念、理解、計算、学習、言語、判断など多数の高次脳機能の障害からなる症候群」と定義しています。

 つまり、認知症は、脳の神経細胞がさまざまな原因で死んでしまったり、働きが悪くなることで、認知機能が低下するために起こる病気だということです。

 認知症の原因は実に多種多彩です。

なかには混合型認知症を発症する人もいます。混合型認知症とは、単独で認知症を起こしうる疾患を2種以上合併している場合をいい、一番頻度が多いのはアルツハイマー型認知症+血管性認知症です。

 

変性性認知症……脳の神経細胞が異常に変化または現象することで発症

[変性性認知症]

・ アルツハイマー型認知症

・ レビー小体型認知症

  • パーキンソン病が引き起こす認知症

・ 前頭側頭型認知症(ピック病など)  他

 

二次性認知症……何らかの疾患や外傷の影響を受けて発症

[血管性認知症]

・ 多発性脳梗塞型

・ 限局性脳梗塞型 他

 [感染]

・ クロイツフェルト・ヤコブ病 他

[治療可能な認知症]

・ 正常圧水頭症

・ 慢性硬膜下血腫 他

 

忘れる、覚えられない、わからない、うまくできない――認知症の主な症状

 

 さて、認知症には、「中核症状」と「行動・心理症状(周辺症状)」の二つの症状があります。

 

 

 中核症状は、脳の神経細胞が障害されたことによって直接起こる症状で、これは認知機能が低下した人であれば、誰にでも起こる症状です。具体的には、

・ 記憶障害………新しいことが覚えられない、直前に起きたことも忘れる。

・ 見当識障害………現在の年月日、時刻、場所、人物などがわからない。

・ 判断力障害………筋道を立てた思考ができなくなる。

・ 実行機能障害………段取りや計画が立てられない。

・ 問題解決能力の障害………予想外のことが出てくると混乱してしまう。

・ 失認………それが何かわからない。

・ 失語………物や人の名前がわからなくなる。

・ 失行………服を着られない、ボタンをかけ違えてしまうなど、日常生活で普段行っている動作がうまくできなくなる。

 などが挙げられます。

 

 

 一方、行動・心理症状は、中核症状の状態、本人の性格、身体状況、生活環境、人間関係などによって左右される症状で、例えば、

・ 妄想

・ 幻覚

・ 不安、焦燥

・ 抑うつ

・ 徘徊

・ 暴力、暴言

・ 失禁、不潔行為

・ 異食

・ 睡眠障害

・ 介護抵抗

・ 無為、無反応

 などが、これに当たります。しかし、その現れ方は人それぞれで異なり、ほとんど出ない人もいますし、ある症状が極端に強く出る人もいます。

 

では、次にそれぞれの認知症がどのような病気なのか、もう少し詳しく見ていくことにしましょう。

 

脳の神経細胞が変化または減少することで発症する「変性性認知症」

 

①もの忘れ、徘徊、幻覚、妄想などが見られるアルツハイマー型

■特徴

 認知症で最も多いのが、この変性性認知症の代表格であるアルツハイマー型認知症で、ご承知のとおり、アルツハイマー病が原因で起こります。血管性認知症が男性に多いのに対し、こちらは女性に多く見られる認知症です。

 後で詳しく説明しますが、アルツハイマー型認知症は、病理学的には海馬をはじめとする大脳皮質の萎縮、組織学的には細胞外の老人斑と細胞内の神経原線維変化を特徴する神経変性疾患です。

 年単位でゆっくりと進行するため、いつ発症したのかわかりにくく、深刻なもの忘れや迷子になって、初めて気づかれるケースも少なくありません。

 

 

(初期の症状として、約束を忘れる、同じことを何度も言ったり聞いたりする、財布などを置き忘れたりしまい忘れたりする、水道を出しっ放しにしたり、コンロの火を消し忘れたりするなど、記憶にかかわる症状が挙げられます。

 その後、進行して中期になると、日時や場所がわからなくなるなど、認知機能が低下していき、徘徊、幻覚、妄想などの行動・心理症状も多く見られるようになります。さらに、末期になると、認知機能は著しく障害され、会話は成り立たず、家族が誰であるかもわからなくなります。また、身体機能の低下も顕著となり、誤嚥性(ごえんせい)肺炎や転倒による骨折を起こしやすくなります。)

記憶障害や理解力・判断力が低下するレビー小体型認知症

 もう一つ、高齢者における認知症でよく見られるのが、レビー小体型認知症です。これは、レビー小体と呼ばれる「異常なタンパク質のかたまり」が、大脳皮質に出現して起こる認知症です。

 記憶障害や理解力・判断力の低下をきたしますが、病初期から中期にかけては、記憶障害はあまり目立ちません。それよりも、視覚的にものごとをとらえることが難しくなり、図形描写が障害されることが多く見られ、実際には存在していない子どもや小動物、虫などが見える幻視が現れることもしばしばで、とくに暗くなると現れやすくなります。

 また、パーキンソン症状(動作緩慢・筋強剛・姿勢反射障害など)や、気分や態度の変動が大きく、一日の中でも、穏やかな状態から無気力状態、興奮状態、錯乱状態を繰り返したり、夢を見て大声で怒鳴ったり、暴れたりするレム睡眠行動障害、うつ症状、自律神経症状・失神など、特徴的な症状がさまざまに出現します。

 

③パーキンソン病が引き起こす認知症

 パーキンソン病は脳の指令を体へ伝えるドーパミンが異常減少を起こす病気です。

 ドーパミンは、運動調節、ホルモン調節、快の感情、意欲、学習などにかかわる神経伝達物質で、これが減ることから、運動機能の著しい低下、手足の震え、筋肉のこわばりなどの症状が起こります。進行速度は比較的緩やかで、初期に認知症は見られませんが、歩行障害が進み、嚥下障害や精神症状などが現れる後期になると、認知症を発症することが少なくありません。

 パーキンソン病と前出のレビー小体型認知症の共通点は、脳内にレビー小体が存在することですが、すでにお話ししましたように、レビー小体型認知症は、レビー小体が大脳皮質にまで広がる病気で、それに対してパーキンソン病は脳幹部にレビー小体が偏在するという違いがあります。しかし、レビー小体型認知症はパーキンソン症状を伴い、パーキンソン病が引き起こす認知症は幻視を伴うことから、パーキンソン病からレビー小体型認知症への移行関係が問題となります。

 

性格が変わり、社交的でなくなる前頭側頭型認知症

 前頭側頭型認知症は、大脳の前頭葉と側頭葉が萎縮することで起こります。ほとんどが64歳以下で発症し、性格変化と社交性の消失が初期から見られます。

 例えば、

・ 派手になって、やたらと買い物をするようになった。

・ 逆に、身だしなみをかまわなくなった。

・ 抑制が欠如し、遠慮がなくなった。

・ 暴力行為や悪ふざけをするようになった。

・ いつも同じ動作をしたり、同じものを食べ続ける、といった常同的行為が見られるようになった。

・ 何かに関するこだわりが異常に強くなった。

・ 平然と万引きをする。

・ 感情が鈍くなり、他人に共感することや感情移入ができなくなった。

 などが挙げられます。

 ほかにも、滞(たい)続言語(ぞくげんご)といって、例えば、「手を洗っているからね」というフレーズを状況とは関係なく、いつも繰り返し話すということもあります。

 また、言葉の意味、とくに物の名前の意味することがわからなくなるケースもあり、時計を指して「これは何ですか?」と尋ねても答えられず、「時計ですか?」と確認してもわからないのですが、「今、何時ですか?」と聞くと、時計を見て時間を教えてくれます。つまり、それが時間を示しているものだということは忘れていないのです。

 このあたりが、「忘れる」ということが中心症状になるアルツハイマーとは、だいぶ異なるところです。

 

 

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