症状

タンスの角にちょっと頭をぶつけただけだったのだが…… 「慢性硬膜下血腫・MCI」

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野村邦夫さん(仮名)・初診時82歳・男性

定年退職を機にテニスを始め、今でも週に1回はラケットを握っているという野村邦夫さん(82歳・男性 / 仮名)でしたが、2日前から食事をしなくなり、また、電話での応対がおかしくなり、つじつまの合わないことをいうようになりました。

 ご家族が、真っ先に頭に浮かんだのは、アルツハイマー型認知症。「とにかく病院へ行って、詳しく診てもらおう」ということになって受診されました。

 聞くと、受診時の1か月前に、「タンスの角にちょっと頭をぶつけた」(頭部打撲の既往)ということで、受診時の状況からも、典型的な慢性硬膜下血腫の理学的所見でした。

 野村さんは、十二指腸潰瘍で過去に一度入院したことがありますが、それ以外は病気らしい病気をしていません。したがって、病歴と理学的所見からは、何らかの頭蓋内病変、とくに慢性硬膜下血腫を否定し得ないと考えられます。こうした場合、頭部CT検査を行うのが一般的です。いや、正しくは、多くの医療機関では「頭部CT検査しか行わない」というべきかもしれません。

 

しかし、CT検査だけでなく、MRIやPET検査も受けていただきたいと、患者さんやそのご家族におすすめします。それは、診断内容に見落としがあってはならないからです。

 もちろん、野村さんにも十分な説明を行い、納得していただいたうえで、MRIとPET検査を受けていただきました。

 CT検査の結果は、左側側頭部にやや高吸収域な血腫が認められ、また脳が圧迫されて脳の正中偏移(脳の中央線が右へ寄っている)が認められることから、慢性硬膜下血腫の所見でした。

 また、MRI検査ではほかの疾患の存在は認められませんでした。ところが、FGP-PET検査では、後部帯状回の糖代謝の低下が認められたのです。これはアルツハイマー病に進行する可能性のあるMCIです。

 つまり、野村さんは、慢性硬膜下血腫だけでなく、MCIを合併していたことが、これらの画像検査で判明したわけです。

 

野村さんは、医療機関で手術を受け、血腫をすべて除去し、軽快退院されました。そして、その後は、ドネペジル(アルツハイマー病の治療薬)の服薬を開始し、認知症予防教室に通うなど、積極的な予防策を実践しています。

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