症状

認知症状が現れる高次脳機能障害の症例って?

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認知症のカテゴリーには属しませんが、認知症状が現れる疾患に「高次脳機能障害」があります。

 高次脳機能障害は、医学的には統一された定義はありませんが、一般には、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、脳の器質的病変の原因となる事故によって受けた傷や、疾病の発症の事実が確認されています。

 認知症も高次脳機能障害も、それまで健常だった脳の機能がある時期から低下する、という点については同じですが、認知症が一般的に次第に進行していくのに対して、高次脳機能障害は回復する部分がある、という点で異なっています。

 つまり、高次脳機能障害は後天性脳損傷が原因の後遺症であり、進行的に悪化するのではなく、その症状に合わせた適切なリハビリテーションを受けることで、治療効果がみられ、症状の改善が期待できます。

 しかしながら、すべての人に確実な効果があるとは限りません。また、なかには受傷(高次脳機能障害の原因となる脳の損傷の発症)から長い年数を経過しても改善する人もいますが、一般には受傷から年数の経った場合では、改善の度合いに限界があるので、早期にリハビリテーションを行うことが望まれます。

 

 

ここで一例を紹介します。

 

 藤川孝夫さん(57歳・男性 / 仮名)は、1か月ほど前に交通事故にあいました。幸いケガの程度は軽く、順調に回復しているかのように見えたのですが、2週間が過ぎた頃、事故の前に経験したことが思い出せなくなるなど、認知機能低下などの症状が現れました。

 ケガの治療で診てもらっていた医師に、そのことを訴えると、事故による後遺症の可能性があるということで、検査のため受診されました。

 

 事故後20日のMRI画像では、左右に慢性硬膜下血腫が認められ、事故後約40日には左側の血腫が大きくなって、明らかに脳を圧迫している状態でした。そのため、手術により血腫を取り除いたのですが、事故後約80日、今度は反対側の血腫が大きくなっていて、これも手術で取り除きました。

 そして、事故後500日のMRI画像ではまったく異常が認められませんでした。

 しかし、FDG-PET画像では、両側頭頂葉に薬剤の集積低下部位が認められ、認知症状と一致しました。

 その結果、藤川さんは、交通事故により高次脳機能障害が起きたことがわかりました。

 

 交通事故などの後に突然、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害、自己認識の低下、失行症、失認証、失語症などの症状が出現し、それが原因となって、対人関係に問題が生じたり、生活への適応が難しくなっている場合は、この高次脳機能障害が疑われます。

 ですから、不幸にも交通事故などにあってしまったら、必ず脳の画像検査をすることをおすすめします。

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