症状

家族との会話を覚えていない「アルツハイマー型認知症」

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アルツハイマー型認知症 山口豊さん(仮名)・初診時73歳・男性

 

ある日の団らんでのこと。

「この間、皆で行ったお店、うまかったね」

「そうね。メニューも豊富だったし、何より新鮮な食材で、旬の味を存分に楽しんだって感じよね」

「……」

「やっぱり和食はいいわねぇ」

「おいおい、お前たち、私がいない間に、皆で外食かぁ?」

「いやだなぁ、親父、親父も一緒に行ったじゃないか。うまい、うまいって、けっこう食べてただろ」

「えっ、いつだ?」

「やーね、お父さん、この前の日曜日でしょ。まだ3日しか経ってないじゃない」

「……あっ、そうだった、そうだった。すっかり忘れていたよ???」

 

「最近、親父、ちょっと変じゃない?」

 そう切り出したのは、山口豊さん(73歳・男性 / 仮名)と同居している長男でした。

――そういえば、近頃、家族と話していても、なんだかチグハグな感じがする。

 皆が話題にしていることが、まったく記憶にない。

 妻も、息子夫婦も、「お父さん、あのとき、こうだったじゃない」なんていうが、そんなことはした覚えがない。

 

 山口さん自身も、自分が少しずつ壊れていくのを感じていたようです。

 心配したご家族は、「一度、病院で診てもらったほうがいい」と強くすすめました。しかし、山口さんは、なかなか病院へ行く気にはなれませんでした。

 

――もし、認知症だったらどうしよう。そのうち何もわからなくなって、家族の世話になるしかないのか。そんな馬鹿な。私がボケるわけがない。なーに、単なる老化現象に決まってる。

 

山口さんの、自分が自分でなくなっていく感覚、認知症に対する恐怖は、想像を絶するものだったに違いありません。

 数日後、山口さんは、長男に促され、覚悟を決めて、近くの神経内科を受診したそうです。

 そこで知能検査、MRI検査を受けた結果、診断は、アルツハイマー型認知症。悪い予感は、予感ではなくなり、重い事実となって、山口さんとご家族にのしかかってきました。

 

 画像検査の結果、MRI検査では、海馬の大きな萎縮が見られ、右中頭蓋窩にクモ膜嚢胞(袋状の病変)が認められました。

また、FDG-PET検査では、両側連合野および前頭葉で糖代謝が低下していることが確認されました。

 診断は、アルツハイマー病・連合野タイプ。病気の進行程度は「初期」。

 山口さんには、「ドネペジル」を処方しましたが、もう少し前……MCIの段階で受診してくれればと、どうしても思わざるを得ません。おそらく、もっと前から、何らかの兆候があったはずなのです。ご本人も、ご家族も、それをうすうす感じていたにもかかわらず、やり過ごしてしまったのでしょう。

 なんとも残念な症例です。

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