アルツハイ

認知症治療の柱となる薬とは?現在の代表的な治療薬

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ここでは代表的な治療薬につて触れておきます。

 

①アルツハイマー型認知症の治療薬は4種類

 まず、認知症の診断の中で最も比率の高いアルツハイマー型認知症患者に対する治療薬ですが、日本では現在、ドネペジル(日本名:アリセプト®、ドネペジル®)、ガランタミン(日本名:レミニール®)、リバスチグミン(日本名:イクセロンパッチ®/リバスタッチパッチ®)、メマンチン(日本名:メマリー®)の4種類が承認されていて、ドネペジルは軽度から高度の治療に、ガランタミン、リバスチグミンは軽度から中等度の治療に、メマンチンは中等度から高度の治療に使用されています。

 

アルツハイマー型認知症の治療薬

 

 

 

 

 

一般名

ドネペジル

リバスチグミン

ガランタミン

メマンチン

英語名

Donepezil

Rivastigmine

Galantamine

Memantine

商品名

アリセプト

イクセロンパッチ

レミニール

メマリー

ドネペジル

リバスタッチパッチ

適応

軽度~中等度

軽度~中等度

軽度~中等度

中等度~高度

特徴

・アセチルコリンを分解する酵素を抑制する

・セチルコリンを分解する酵素を抑制する
・ブチリルコリンエステラーゼという分解酵素の働きを阻害する

・アセチルコリンを分解する酵素を抑制する
・神経伝達物質の分泌を促進する

・NMDA受容体を阻害して神経細胞損傷を防ぐ

副作用

吐気、嘔吐、食欲不振、下痢、腹痛など

皮膚のかぶれなど

吐気、嘔吐、食欲不振、下痢、腹痛など

めまい、頭痛、眠気、便秘、食欲不振など

 

 脳内において、記憶や学習などの情報伝達は、アセチルコリンという神経伝達物質によってやり取りされています。アルツハイマー病を発症すると、このアセチルコリンの量が減少してしまいます。そして、減少してしまったアセチルコリンは、分解酵素によってさらに分解されるため、脳内のアセチルコリンはますます減少し、病気が進行していきます。

 ドネペジルや、ガランタミン、リバスチグミンは、そのアセチルコリンを分解する酵素(アセチルコリンエステラーゼ)を阻害して、アセチルコリン減少を食い止める薬剤です。これによって、注意力低下や意欲低下が改善され、生活機能が上がり、副次的には患者さんが抱いていた不安も解消される方向に向かいます。

 加えて、ガランタミンは、セロトニン、ドーパミン、GABA、ノルアドレナリンといった神経伝達物質の分泌を促進する働きもあります。

 セロトニンは気分を安定させる作用、ドーパミンは快・喜びの感情を刺激して、運動機能を調節する作用、GABAは緊張を緩和する作用、ノルアドレナリンは意欲に働きかける作用がありますから、これらが分泌されることによって、陰性症状や易怒(起こりっぽい)などさまざまな症状の改善が期待できます。

 また、リバスチグミンは、ブチリルコリンエステラーゼという分解酵素の働きも同時に阻害することができます。脳内のアセチルコリンが減る原因は、アセチルコリンエステラーゼだけでなく、このブチリルコリンエステラーゼにもあります。

 アルツハイマー型認知症がある程度進行すると、脳内では神経細胞に代わってグリア細胞と呼ばれる神経細胞ではない細胞が増えます。ブチリルコリンエステラーゼは、このグリア細胞から産生され、アセチルコリンを分解するように働くのです。

 このことから、リバスチグミンは、脳内の神経細胞が脱落して、グリア細胞が増えてきた時期においても、中核症状への効果が期待できるのが特徴とされています。

 一方、アルツハイマー病が進行すると、グルタミン酸という脳の神経伝達物質が過剰となり、脳神経のNMDA受容体も活性化します。NMDA受容体というのは、グルタミン酸受容体の一種で、記憶の定着を妨げたり、脳神経そのものを傷つけてしまうことがわかっています。このNMDA受容体を阻害して、認知機能を改善するのがメマンチンという薬剤です。

 メマンチンの優れている点は、「膜電位依存性」といって、普段はNMDA受容体にとって不要な刺激をブロックしていながら、記憶や学習にかかわる情報が送られてくると速やかにNMDA受容体から離れて、その情報シグナルを適切に取り込めることです。これによって、認知機能障害を抑制することができるのです。

 

②薬剤には副作用がある?

 ただし、これらの薬剤には大なり小なり副作用があるのも事実です。

 人によって現れ方はまちまちですが、ドネペジルとガランタミンは消化器系症状が一番多く、吐気や嘔吐、食欲不振、下痢、腹痛などを起こすことがあります。重症化することはほとんどありませんが、まれに脈拍が異常に遅くなるなど、心臓に異常が現れることがあり、ドネペジルについては、最近、筋肉が障害を受ける「横紋筋融解症」が報告されています。

 また、メマンチンで一番多い副作用はめまいで、とくに飲み始めに多く見られます。その他、頭痛や眠気を催したり、便秘や食欲不振を生じることがあります。

 リバスチグミンは、飲み薬としては吐気などの副作用が強すぎたため、あまり普及することなく、現在はパッチ製剤(貼り薬)が使用されています。

 パッチ製剤は嚥下障害のある人や、何らかの理由で薬を飲むことができない人でも、問題なく投与できます。また、有効成分が皮膚から徐々に吸収されるので、薬剤の血中濃度の上下が少なく、長時間一定に保たれます。そのため、飲み薬と違って、消化器症状などの副作用が少ないというメリットがあります。

 したがって、リバスチグミンパッチの副作用は軽度なもので、多くは皮膚のかぶれなどです。ただし、消化器症状や心疾患、ぜんそくなど気管支や肺に疾患のある人は、重い副作用が出ないように注意する必要があります。

 

③その他の認知症の治療薬

 レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症の治療薬が効果的な場合もあり、試みられることもあります。一般の治療としては、抗精神薬による精神症状のコントロール、運動症状に体する抗パーキンソン病薬、自律神経障害に対しての血圧コントロールになります。ただし、抗精神薬は運動症状を悪化させる作用のあるものが多く、逆に抗パーキンソン病薬は、精神症状を増悪させることがあるため、薬剤調整が難しい場合があります。

 前頭側頭型認知症は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬などの抗うつ薬が行動異常の緩和に有効であるという報告があります。クロイツフェルト・ヤコブ病は、症状に応じた対症療法を行い、経管栄養、抗生剤投与、ミオクローヌスに対する抗けいれん薬投与などが行われます。

 

早期発見・早期治療で進行を食い止めることが可能

 

 すでにご承知のとおり、これらの認知症は、いずれも根本的治療薬がいまだ確立されていません。しかし、早期発見・早期治療を施すことで、病気の進行を遅らせることは十分可能です。とくに、最も患者数の多いアルツハイマー型認知症では、早期にその芽を見つけ、薬を服用することで、認知機能の低下速度は著しく緩やかになることがわかっています。

 ただし、早期発見をするには、早期に適切な検査を受けることが必要です。ただ、「どこでもいいから、“もの忘れ外来”に行けばいい」というものではありません。それでは「異常なし」と太鼓判を押されても、下手をすると10年後に認知症が発症してしまった、ということにもなりかねないのです。

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