悩み

「自分だけはボケない」と思っていませんか?

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人を愛したことも、楽しかったことも、うれしかったことも、時に味わった挫折も、そしてそれを乗り越えてきたことも、今までの人生のすべてを忘れてしまう認知症……。

 

「もし、自分がそうなってしまったらどうしよう」と考えたことのある人は、少なくないと思います。

 でも、半面、どこかで「自分は大丈夫!」と思ってはいませんか?

 なんの根拠もないのに、「自分がボケるはずがない」「ボケるなんて絶対に考えられない」という人は、とても多いように感じます。

 

 すでに日本は超高齢社会に突入し、認知症の患者数はうなぎ上りに増え続けています。厚生労働省研究班の調査によると、65歳以上の高齢者のうち認知症の人は推計15%で、2012年時点で462万人、軽度認知障害(MCI)と呼ばれる予備軍が400万人。つまり、65歳以上の4人に1人が、認知症とその予備軍に該当する計算です。

 

 さらに、団塊の世代が75歳以上となる2025年には、「日常生活自立度Ⅱ」(日常生活に支障をきす場合があるが、誰かが注意していれば自立できる状態)以上の認知症高齢者は470万人と推計されています。また、65歳未満の若年性認知症患者も約3万7800人(2009年厚労省調べ)いるのです。

 2014年6月、警察庁は、「前年1年間に認知症またはその疑いで行方不明になったとして、警察に届けられた人が約1万人に上った」とショッキングな調査結果を発表しました。

同9月には、認知症が原因で徘徊するなどし、身元がわからないまま施設に保護されている人が、同5月末時点で、全国に35人いるとの調査結果も発表されました(厚生労働省)。6月に行われた全国の自治体への調査では、自治体が2013年度に把握した認知症の行方不明者は5201人。そのうち発見されていない人は132人、発見されたが死亡していたのは383人だったそうです。

 

 これが、現実です。

 

 今や認知症は他人事ではなく、誰でも発症する可能性のある病気なのです。

「私はボケない」「ボケていない」と、あなたがどんなに自分に言い聞かせても、認知症はあたかも忍び寄る影のように、闇の中で息づいているかもしれないのです。

 ところが、多くの方は、「自分がボケるかもしれない」という現実を見ようとはしません。確かに、誰でも、認知症が進んで、何もわからなくなってしまう自分など、想像すらしたくありません。それは、自分にとって、許しがたいことです。

 しかし、目を背けることは、結果的に、その許しがたい状況を自分でつくってしまうことにもなりかねない、ということを知ってほしいのです。早めに、「認知症の芽」を察知すれば、大事に至る前に処置を施すことができるのです。

 

 私が診たAさん(男性)がそうでした。

 

「あれ? なんだったかな?」

 当時55歳だったAさんは、最近、もの忘れが多くなってきたことを実感していたそうです。同居している父親が認知症を患っているということで、「もしや自分も……」と不安に思い、来院されたとのことでした。

 Aさんには、さっそくMRIとPET検査を受けてもらいました。その結果、ごく早期のアルツハイマー型認知症が始まっていることがわかったのです。後で詳しくお話ししますが、PET検査は認知症の早期発見に極めて有効な画像検査で、Aさんの場合もMRIでは変化はわかりませんでしたが、このPET検査によって認知症を早期に発見することができました。

 私はただちに、Aさんに進行抑制薬を処方しました。その後、Aさんのアルツハイマー型認知症は「もの忘れが多い」という程度に留まり、それ以上の進行を抑えることができています。

 

 さて、この話を聞いて、あなたはどう思いましたか?

「Aさんは運がよかったから」という方もいるでしょう。でも、決してそんなことはないのです。

 Aさんは、「もしも認知症だったら」という不安や恐怖心を抱きながら、それでも勇気をもって検査を受け、早めに認知症の芽を発見できたからこそ、現在、その進行を遅らせ、普通の人とほとんど変わらない生活をおくることができているのです。

 

 認知症は、早期発見・早期対応が最も重要であり、そのためには適切な検査・診断が不可欠です。また、認知症をいたずらに恐れるのではなく、正しく理解することも大切です。

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