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今回は親の認知症と相続のおはなしです

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今回は親の認知症と相続のおはなしです

認知症に伴う意外な問題のひとつに「相続」があります。

遺言者に遺言執行に必要な意思能力 ® (遺言能力)が備わっていたか、「自筆証書遺言」の効力が争われる事案が、多くなっているのです。特に、遺言者がすでに亡くなっている場合、直接遺言能力を判定することができないため、遺言を作成した時点での意思能力 ®が問題となって、争われる訴訟も年々増加しています。

こうした係争を未然に防ぐため、メディカルリサーチでおこなっているのが、「意思能力鑑定サービス」です。

遺言状を書くときには第三者に、自分の意思能力 ®の評価をしてもらったほうがいいですよ、というものです。

認知症の高齢者が公証人役場に来て、自分ではない別の人が書いた遺言状を公証人に見せても、公証人はその人が認知症であるか否かは判断できません。それでも、「確かにあなたがサインしましたから、公正証書としてお預かりします」となるのですが、後でもめるケースが珍しくありません。

そのため、意思能力 ®の鑑定は弁護士や税理士にとって大きな課題なのですが、意思能力 ®をきちんと評価してくれる医師もいなければ、システムもないのが現状でした。ならば精神科医と画像診断の二面から意思能力 ®を評価する第三者機関をつくろうというのが、このサービスの発端です。

 

そんな事案2件を紹介します。

公正証書遺言に関わる事案 Dさん(男性)

食品製造会社を経営するDさんには、再婚した現在の妻と、死別した前妻との間に生まれた実子(男性・以下長男)、および現在の妻とその前夫との間に生まれ、養子縁組をした次子(男性・以下次男)の同居家族がいました。

長男はDさんの後継者として専務取締役に就任し、会社経営に携わっていましたが、経営方針をめぐってDさんと対立したことを機に辞任し、Dさんと別居することになりました。

しかし辞任後も、Dさんは頻繁に長男に事業上の相談をし、事実上、経営に参画させていました。Dさんと長男の親子関係は、その後も大きな変化もなく続いていたそうです。

ところが、Dさんが 74 歳のとき脳梗塞を発症し、リハビリテーションのため専門医療機関に長期入院となりました。

当初、現在の妻がDさんの介護をしていましたが、ご自身も体調不良気味でじゅうぶんな対応ができませんでした。Dさんも正常圧水頭症を発症するなど経過は芳しくなく、認知症状も出てくるようになりました。

その後、Dさんは自宅で療養することになり退院しました。自宅療養中も奥様の体調不良が続いていたので、長男が主に世話をしていましたが、結局、介護施設に入所することになりました。

ところが、入所してしばらくするとDさんは突如、施設を転所しました。長男は、そのことをまったく知らされておらず、後日、次男からの電話で初めて知ったそうです。それも、父親を別の施設に移したことと、Dさんの現在の妻とともに次男が世話をしているということのみで、どこにいるということは一切明かされませんでした。

長男が、父親と継母の行方について知らぬ間に、1年あまりが過ぎました。

長男は、Dさんの脳梗塞発症以来、専務取締役に復帰し事実上の最高経営責任者として、会社を取り仕切っていました。しかし突然、会社の顧問弁護士から取締役の解任と、次男の代表取締役就任の通告がありました。次男は大学卒業後、フリーター状態で、会社経営にはまったく関わっておらず、会社の株式のほとんどをDさんが所有し、残りの1割程度の株式をDさんの現在の妻が所有していたため、長男の知らない間に臨時株主総会が招集され、前記の決議がなされたそうです。

その1年後、Dさんが亡くなりました。

死後、顧問弁護士から連絡があり、長男はDさんの公正証書遺言があることを知りました。その内容は、Dさん所有の株式は、すべてを次男に相続させるというものでした。

しかし、公正証書遺言が作成された時期には、Dさんの認知症が重篤であったことは明らかで、遺言書を書く意思能力®がDさんにあったとは考えにくく、また臨時株主総会が開催された経緯についても、その成立の有効性には大きな疑義があります。長男は、当時のDさんの意思能力®について医学的観点から究明しようと、意思能力鑑定サービスを利用しました。

 

 

  交通事故後の高次脳機能障害と、当該事故との因果関係をめぐる事案 Eさん( 60 代・女性)

Eさんは、お孫さんと外出していた折、接触事故に遭 あいました。横断歩道に飛び出した孫を追いかけ、トラックに接触したのでした。

Eさんは孫を覆うように抱きかかえた前傾状態で、ひたいがトラックの前面にぶつかり、その後路上に転倒しました。

前額部の打撲のほかに目立った外傷、外出血は認められず、すぐに搬送され救急病院で頭部CT検査を受けましたが、特に異常がなかったため、当日そのまま帰宅したそうです。しかし事故から2週間を経過した頃、不安、うつの症状とともに徐々に次のような症状が出るようになりました。

・事故当時から過去 20 年程度の記憶の欠落。

・鏡を見ても、現在の姿(シワや白髪が増えた現在の容姿)が、自身のものであることが理解できない。

・孫の存在が理解できない(誰だかわからない)。

・娘の姿を見ても、それが自身の娘であることがわからない。

・新しいことが記憶できない(新たに得た記憶を長時間保持できない)。

また、社交的でなくなったという人格の変化も認められました。

ご家族は当初、認知症を疑いましたが知能検査の結果は良好で、まったく異常はありませんでした。

しかし、症状がいずれも事故後からあらわれたことから、ご家族はEさんをセカンドオピニオン目的で大学病院をはじめ複数の病院で診てもらい、再度画像検査を受けました。

それでも交通事故外傷に起因する高次脳機能障害との明らかな診断は得られず、自賠責保険も当該の後遺障害の認定がなされませんでした。それどころか、「保険金目当ての詐病ではないか」と疑われたそうです。

その後も、認知症とは異なるEさんの症状(知能には問題がなく、高度の知的会話も可能、記憶も失われた 20 年程度のほかは明確)から、強く事故外傷を疑うご家族が、知人から紹介された弁護士に相談し、事故による高次脳機能障害を証明するサポートを受けることになりました。

そして検査の結果、Eさんの高次脳機能障害が交通事故外傷に起因するものと結論づけることができ、ご家族は自賠責保険請求の訴訟に踏み切りました。

みなさんはどのように感じられたでしょうか?

脳の機能障害、認知機能の低下は、このような問題を抱えているのです。

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