悩み

認知症の人が書いた遺言書は有効? 無効?

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小出勝さん(仮名)・男性

 

ある地方で食品製造企業を経営する小出勝さん(男性 / 仮名)には、再婚した現在の奥様と、死別した前の奥様との間に生まれた実子(長男)、および現在の奥様とその前夫との間に生まれ、養子縁組をした次男の同居家族がいました。

 長男は、父・小出さんの後継者として専務取締役に就任し、会社経営に携わっていましたが、経営方針をめぐり対立。これを機に専務取締役を辞任し、家を出て別居することになりました。

 しかし、辞任後も小出さんは頻繁に、長男に事業上の相談を行い、事実上、経営に参画させていました。

 小出さんと長男の親子関係は、その後も大きな変化もなく続いていたそうです。

ところが、74歳とき、小出さんは脳梗塞を発症し、リハビリテーションのため長期入院を余儀なくされました。

 介護は奥様が行っていましたが、当時は体調が不良気味で、満足にはできませんでした。加えて、小出さんも水頭症を発症するなど、経過は芳しくなく、認知症状も出現するようになりました。

 その後、小出さんは自宅で療養することになり、退院。自宅療養中は、奥様も体調不良が続いていたので、長男が主に小出さんの世話をしていましたが、結局、介護施設に入所することになりました。

 ところが、入所してしばらくすると、小出さんは突如、別の施設に転所されました。長男は、まったくそのことについて知らされておらず、後日、次男からの電話連絡で初めて知ったといいます。

 次男の電話の内容は、父を別の施設に移したこと、現在は実母(小出さんの奥様)とともに自分が世話をしている、という2点のみ。どこにいるということは一切明かされず、長男は、自分の父と継母の行方について知らぬまま、1年余が経過しました。

 

 小出さんが脳梗塞を発症して以降、長男は専務取締役に復帰し、事実上の最高経営責任者として、会社を取り仕切っていました。

 しかし、ある日突然、会社の顧問弁護士から、取締役の解任と、次男の代表取締役就任の通知がなされました。次男は大学卒業後、フリーター状態で、会社経営にはまったく関わっていませんでしたが、会社の株式のほとんどを小出さんが所有し、残りの1割程度の株式を小出さんの奥様が所有していたため、長男の知らない間に臨時株主総会が招集され、前記の決議がなされたということです。

 それから1年弱後、小出さんが死去しました。

 死後、顧問弁護士から連絡があり、長男は、小出さんの公正証書遺言があることを知りました。そして、小出さん所有の株式は、そのすべてを次男に相続させることが判明しました。

 しかし、公正証書遺言が作成された時期には、小出さんの認知症が重篤であったことは明らかで、遺言を書く意思能力が小出さんにあったとは考えにくく、また、臨時株主総会が開催された経緯についても、その成立の有効性には多大な疑義があります。

 長男は、当時の小出さんの意思能力について、医学的観点から究明しようと、遺言無効確認裁判を起こしましたが、結果はまだ出ていないそうです。

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